智積院のみどころ

智積院について～由来・歴史

智積院は、京都市東山区に位置する真言宗智山派の総本山であり、全国に約3,000の末寺を持つ寺院です。この寺院と智山派では、桔梗紋をシンボルとして採用しています。

もともと智積院は豊臣秀吉の時代に一度廃絶しましたが、江戸時代に徳川家康から寺地を拝領し再興され、現在の姿となりました。慶長6年（1601年）には、徳川家康の帰依を受け、豊国神社境内にあった坊舎と土地を譲り受けたことで再興の歩みを始めました。

智積院が再興される以前、この地には豊臣秀吉が建立した祥雲禅寺がありました。この寺は秀吉が最初の息子である鶴松（棄丸）の菩提を弔うために建立したものでした。祥雲禅寺の建設には、当時の京都所司代である前田玄以と加藤清正が普請奉行を務めました。特に、築城の名手として知られる加藤清正が現場を担当し、その功績を称えて、加藤家の家紋であった桔梗紋が智積院の紋として受け継がれたと言われています。

その後、1615年に徳川家康が豊臣家を滅ぼし、祥雲禅寺は智積院に寄進される形で、新たな歴史の幕を開けました。

また、加藤清正は豊臣秀吉の寵臣として知られる武将で、秀吉の死後は徳川家康の家臣としても尽力しました。清正の兜には蛇の目紋が使われていましたが、戦場では蛇の目紋を、祝い事では桔梗紋を使い分けていたとされています。加藤清正が桔梗紋を使用した背景には諸説あり、九州征伐で失脚した尾藤定知から譲り受けた調度品をそのまま使用したという説や、清正の出自が土岐・明智氏の流れを汲んでいるためという説があります。

智積院にはこうした歴史的背景が詰まっており、寺院を訪れる際にはその深い物語を感じ取ることができます。

桔梗の花について

桔梗の花：秋の風物詩とその魅力

秋の七草の一つとして親しまれている桔梗の花は、万葉の昔から日本人の生活に深く根付いてきました。古くは「アサガオ」と呼ばれ、万葉集に登場する「アサガオ」は、実際にはこの桔梗を指していると考えられています。

桔梗はキキョウ科に属する多年草で、その英名は「Balloon flower（バルーンフラワー）」と呼ばれるように、つぼみの形が紙風船のように膨らんでいるのが特徴です。開花時期は6月から10月と比較的長く、気候や種類によって異なりますが、庭や自然の中でその美しい姿を楽しめます。花色は青紫、白、ピンクが一般的で、中には紫と白がまだらに混じった品種もあります。青紫色は「桔梗色」として日本の伝統色の一つとなり、平安時代には衣装の織色として、江戸時代以降には染色としても広く用いられ、現代でも和装や衣類などに多く見られます。

桔梗の花にはそれぞれの色に応じた花言葉があります。紫の花は「変わらぬ愛」「永遠の愛」「気品」「誠実」を象徴し、白は「清楚」「従順」、ピンクには「幸薄」という意味が込められています。また、8月2日、8月28日、9月1日は桔梗を誕生花とする日です。

桔梗の根には薬用成分が含まれ、鎮静や鎮痛、のどの痛みを和らげる効果があり、古くから漢方薬の材料として重宝されてきました。さらに、食用としても利用されることがあります。根は非常にアクが強いため、流水に数日間さらして外皮を柔らかくしてから漬物や山菜として食べられます。また、桔梗の花を用いて作るリキュールもあります。花から滲み出る乳液を拭き取り、ドライ・ジンに浸けると、美しい色のリキュールが出来上がります。

しかし、桔梗は現代の日本において絶滅危惧種に指定されています。本来は日本各地に自生する草花でしたが、外来種の侵入、森林伐採、地球温暖化などの影響により野生種の個体数が減少しています。それでも園芸品種としては育てやすい花であり、多くの種類が流通しているため、開花時期には庭園や花畑でその美しい姿を目にすることができます。

桔梗は私たちの文化や生活に深く関わってきた花であり、その優美な姿と豊かな歴史は、今後も大切に受け継いでいくべきものです。

智積院の桔梗

智積院を彩る桔梗の花：1,000本以上が織りなす絶景

智積院のシンボルともいえる桔梗の花。開花時期になると、参道や境内の至る所で紫や白の美しい花が咲き誇り、訪れる人々を魅了します。その数はなんと1,000本以上。緑豊かな苔の中に映える桔梗の花の鮮やかな色合いは、まさに必見の光景です。

さらに、金堂の正面に掛けられる幕をはじめ、境内のさまざまな場所で桔梗の花をモチーフとした紋を見つけることができます。智積院を訪れた際には、桔梗の花や紋を探しながら散策するのも楽しいひとときとなるでしょう。

桔梗の見ごろは、その年の気候によって多少異なりますが、例年では6月中旬から9月上旬にかけて楽しむことができます。この時期に訪れれば、智積院ならではの風情あふれる桔梗の景色を存分に味わうことができるでしょう。

その年により時期は多少変動しますが、智積院での桔梗の見ごろは、例年では6月中旬～9月上旬です。

利休好みの庭（智積院庭園）

智積院の名勝庭園：江戸時代の風情を今に伝える美しい空間

智積院にある池泉式の名勝庭園は、江戸時代前半に運敞によって作庭された、風情あふれる庭園です。その美しさは「東山第一」と称され、一度は訪れる価値があるおすすめの名庭として知られています。この庭園は江戸時代当時の様相を色濃く残しており、その歴史的価値が認められ、昭和20年に国の名勝に指定されました。

庭園を一望できる隣接の大書院からの眺めは圧巻で、まさに見ごたえのある風景が広がります。滝の流れや刈り込まれた築山が織りなす景観が庭園の特徴であり、右手には「三味線のばち」とも呼ばれる大刈り込みが見られます。築山には紅葉、サルスベリ、ツツジなどが植えられ、四季折々の花々が庭を彩り、訪れるたびに異なる魅力を楽しめます。

この庭園は、現在でも京都を代表する名庭の一つとしてその姿を保ち続けています。また、比較的観光客が少ないため、静かな環境の中でゆっくりと美しい庭園を堪能できる点も大きな魅力です。歴史と自然が織りなす優美な空間で、心落ち着くひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

国宝・重要文化財などの貴重な品々

智積院の見どころ：庭園だけではない文化財の宝庫

智積院には、美しい庭園だけでなく、多くの見どころがあります。大小さまざまな障壁画や貴重な宝物、高僧の著作など、歴史と文化の粋が詰まっています。特に、収蔵庫に収められている国宝や重要文化財指定の襖絵は、必見です。

収蔵庫には、国宝指定の「桜図」や「楓図」、そして重要文化財に指定されている「松雪の図」などが展示されています。「桜図」は、金箔をふんだんに使用した豪華絢爛な背景に、力強く描かれた桜の大木が特徴的です。絵具を盛り上げる技法を用い、一枚一枚の花びらが繊細かつ大胆に表現されており、その迫力に目を奪われます。

「楓図」もまた、「桜図」と同じように華やかで、枝いっぱいに広がる楓の古木が生き生きと描かれています。その圧倒的な存在感は、安土桃山時代の文化の豊かさを如実に物語っています。

どの襖絵も非常に華やかで、見る者を魅了する迫力があります。また、収蔵庫内では襖絵に関する解説放送が流れており、初めて訪れる方や詳しくない方でも楽しめる工夫がされています。このような配慮も、智積院の魅力を一層引き立てています。

歴史や芸術に触れながら、安土桃山時代の華やかな文化に思いを馳せるひととき。智積院を訪れる際には、ぜひこれらの貴重な文化財にも目を向けてみてください。

智積院ライブカメラ

智積院では参道や庭園をライブカメラで配信しています。境内の花や木々の様子、開花状況や日々の天候などリアルタイムでご覧いただけます。庭園にもライブカメラが設置されていますので、ライブ配信確認し、人がいなければ、チャンスです！！利休好みの名勝庭園を独り占めできるかもしれません。雪が降った時の庭園は特に見て頂きたいと思います。

ライブカメラ

精進料理

智積院茶寮 桔梗では四季折々の旬の食材を楽しむことができ、健康食としても人気のある精進料理が人気を集めています。

精進料理

冠木門(かぶきもん)

宗祖弘法大師千百五十年御遠忌を記念し、昭和59年(1984)3月1日に、智積院檀徒より寄進されたものです。四季折々の草花との冠木門は敷地に入ってすぐの所にあります。個人的に木のぬくもりのある質素な冠木門は智積院のイメージとしてあります。

四季折々の草花

夏には見事な青もみじを見ることができ、あじさいエリアには梅雨の時期になるとたくさんの紫陽花が咲き誇るので、1年を通して四季折々の草木を愛でることができます。常にこまめに清掃されているので、綺麗な境内が維持されている点も見どころになります。毎年恒例となったフォトコンテストは境内の草花や催事など、積院境内で撮影された風景、人物、草花等の作品を募集しています。

智積院フォトコンテスト

智積院で朝拝体験とご朝食

京都東山の地にある真言宗智山派の総本山智積院。智積院会館の中にある宿坊は誰でも宿泊することが可能です。昭和41年（1966年）に建設された宿坊は老朽化のため、2020年には装いを新たに、生まれ変わりました。洋室や和洋室など多様なお部屋で、より快適にお過ごしいただけます。世間の喧騒を離れて、400年前から変わらぬ、朝のお勤めへのご参拝、僧侶による名勝庭園や長谷川等伯一門の国宝の障壁画のご案内など、非日常が体験できます。

智積院で朝拝体験とご朝食

拝観時間・拝観料

［受付時間］午前9時 ～ 午後4時
［拝観料］大人 500円　高校生 300円　 中学生 300円　 小学生 200円
※団体割引（それぞれ20名以上は1名につき50円引き）